日産のマーケティングはなかなか鋭いと思う。 エコ=HVではなく、エコ=ダウンサイジングを正解と見据えたからだ。
核家族化がさらに進んで小人数家族化が著しいことを考えれば、軽自動車が正解と言うものでデカイHVは企業戦略であると思う。もっと言えば、地方はいざしらず都市圏の街中でのクルマの必要性はない。 業務使用ならHVはありだが、一般にはそこまでの必要はない。小型で燃費が良ければいいので、Co2の排出はあまり関係ないと思う。
極端に言えば、我が家なんてクルマは道楽、と割り切っている。買物も歩いて行くし、実家に行くのも電車でOKである。 なくてもいいと思う位である。 6Km/Lのクルマ(排気量3.3L、18年落ち)だが給油は3回/4カ月位なのだ。でかくてパワフルなバブルカーである。狭い道ではエコカーに道を譲ってもらい、高速ではHV車に道を譲ってもらう。「スゲー」と言われて、人目を引いてナンボ、である。
環境に配慮して街中にはあまりのって行かず、郊外に走りに出る。 渋滞でガソリン撒く位なら郊外で燃しちゃえ、である。
日産ノートの好調が示す、本格化するクルマ市場のダウンサイジング
nikkei TRENDYnet 1月30日(水)11時7分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130130-00000002-trendy-ind
クルマの2012年販売トレンドは、ファミリー向けのミニバンがやや勢いを下げ、代わりに4m前後のコンパクトカーが上向きになってきた。トヨタのハイブリッド車「アクア」と「プリウス」が販売ランキングの上位を占めるように、エコへの指向性はもちろん続いている。
ユーザーの小型化志向が加速された要因は、単なるエコ意識だけでなく、景気の低迷や震災の影響など複数の背景にある。最近浸透してきた「ダウンサイジング」という言葉にも表れているが、消費者が自分の本当の「身の丈」に合ったクルマを選ぶようになったのが、数字にも表れているのだ。では、どんなふうに変わっているのか、実際の販売ランキングを見てみよう。
図1は、日本自動車販売協会連合会(以下、自販連)がまとめた新型乗用車販売ランキングの2007年12月分(左)と2007年1〜12月分(右)だ。右の07年間合計分を見ると、1位はトヨタの当時の主力車種「カローラ」。2〜4位を「トヨタ ヴィッツ」「ホンダ フィット」「トヨタ パッソ」のコンパクトカーが占める。
そして5位以下には「日産セレナ」、6位「トヨタ エスティマ」、7位「トヨタ ヴォクシー」、10位「トヨタ ノア」と4台のミニバンがランクイン。エスティマは全長4.8mの大型ミニバンで、それが年間6位の売れ筋というのがすごい。左の07年12月分を見ても、ヴォクシーやセレナ、ノア、「ホンダ ステップワゴン」などの中型・大型ミニバンがベスト10中の5台を占めるように、ミニバンの存在感は大きい。
では、5年後の2012年にはクルマの売れ筋はどう変化したのだろうか。図2が12年のランキングで、右の年間合計分で目立つ明らかな違いは、ハイブリッド車(以下HV)のプリウスとアクアが1位、2位を占めること。これは現行の3代目プリウスが登場して以来の流れで、09年5月の発売以来ほぼ毎月プリウスが、そして12年10月以降は4mクラスとコンパクトな新登場のアクアがトップを占めている。ここまでHVが強いのはエコカー補助金などの追い風もあったが、ユーザー自身の強いエコ意識の表れだと言える。
一方でミニバン勢を見ると、全長4.2mクラスの小型ミニバン「ホンダ フリード」が4位でトップ。以下セレナ、ステップワゴン、ヴェルファイアの中型ミニバン勢がトップ10圏内で、大型ミニバンのエスティマは20位まで落ちた。ミニバンでも、小型で燃費がいいクルマへのシフトがうかがえる。
そしてベスト10の残りを占めるのはコンパクトカーだが、ここに2012年の新しい大きな流れが表れている。HVのような高価な技術を使わず、従来のガソリンエンジンや車体の改良で低燃費を実現したクルマ、いわゆる「第三のエコカー」の台頭だ。
その好例が新型にフルモデルチェンジした9月発売の日産「ノート」で、年間ランキングでは7位だが、9月以降の月間順位ではフィットを抜いて3位に、ガソリン登録車では1位に付けている。もちろん新車効果も大きいだろうが、純粋なガソリン車のノートが、HVグレードもあるフィットを上回ったのは驚きだ。
燃費の良いエコカーは必然だが、価格差と生涯燃費を考えればHVではなくガソリン車を選ぶという考えのドライバー。子どもが1人なら、まだミニバンは必要なくコンパクトカーで間に合うという若い世代のファミリー。ノートの販売が好調なのは、こうした志向の消費者が増えてきた証拠ではないか。この分析を裏付けるために、ノートの開発責任者である日産自動車の水口美絵チーフ・プロダクト・スペシャリストに、開発の狙いと発売後の反響について話を聞いた。
安さ、広さ、燃費。基本的なことをしっかりやろうと考えた
新型ノートとはどんなクルマか、簡単に説明しておこう。ボディーサイズは全長4100×全高1525×全幅1695mm(2WD)で、車両重量は1030〜1110kg。エンジンは1.2L直列3気筒で、自然吸気とエコスーパーチャージャー付きの2タイプ。車両本体価格は124万9500〜167万4750円だ。JC08モード燃費は22.6〜25.2km/Lで、旧型ノート1.5Lモデルの18km/Lから大幅に向上している。(参照記事)
まず開発に当たっての基本コンセプトだが、「クルマの商品企画は、長いものだと発売の4年くらい前から始まります。難しいのは正確に時差ボケすること」(水口氏)という。時差ボケと表現しているが、要は数年先の未来の流行や経済状況などを見通すことだから、神ならぬ人の身には至難の業だ。
「たくさんのお客さんに買っていただきたいクルマなので、基本的なことをしっかりやろうと考えました。基本とは簡単に言うと、まず安くないとダメ。次に広さ。そして今の時代あたりまえだが、燃費の良さ」(水口氏)
まず安さだが、デフレ基調の日本のマーケットではある程度の値ごろ感が重要で、絶対に外せない。「いろいろ大変だけれど歯を食いしばりましょうと、営業担当の人間と約束しました」(水口氏)という。新型ノートは欧州や北米でも販売する世界戦略車であり、グローバルで部品を調達できる点が低価格化に一役買っている。
次に広さ。フレームやサスペンションを含む主要構成部品をプラットフォーム(車台)と呼ぶが、ノートは日産の同じコンパクトカー「マーチ」と同じ「Vプラットフォーム」を使っている。軽量化を実現したための制約もあるが、機械部分がコンパクトなので、メカミニマムを追求して広さを実現した。例えばアクセルペダルを先代ノートに比べて20mm前に出して、室内をより広くした。
ミニバンに慣れたお客さんに広さをアピールするため、物理的な広さに加え、感覚的に広く感じさせる手法も利用している。後席のニールーム(ひざ部分のスペース)は先代ノートより85mm広いが、さらに前席シートバックの肩の部分を削り、前方の視界を広げて開放感を確保した。
ノートの想定ユーザーにハイブリッドは不要!
そして3番目が燃費。「よく皆さんに聞かれますが、HVももちろん検討しました。でも早い段階でガソリンエンジンのダウンサイジング化を選択しました」。その理由はと聞くと、「最初に言ったお金です。私が想定したノートを買っていただきたいお客様の、生活全部のお金の割り振りを考えた中で、クルマがそんなに場所を占めたくなかった」(水口氏)。
HVを買って1回旅行を我慢するよりも、ノートを買って価格差で旅行にも行く方を選ぶ。そういう生活スタイルを持つ人に、ノートを買ってほしいという。「これは詭弁でもなんでもなく、HVはやはり高いです。理由はすごく簡単で、パワートレインを2つ持っているからです」(水口氏)。
実際にノートとライバルのアクアの価格と燃費を比べてみよう。ノートの売れ筋グレードはスーパーチャージャー搭載の「X DIG-S」で149万9400円、JC08モード燃費が24km/L。アクアは中間グレードの「S」が179万円で、JC08モード燃費35.4km/L。価格差は約30万円で、エコカー減税は両車とも100%の免税対象だ。
ガソリン価格を150円/Lとして、燃費はカタログ値で単純計算すると、30万円の車両価格差を燃費の差で取り戻すには約14万5000km走行する必要がある。実用燃費では変わるにせよ、かなりの距離を走る人でないと価格差は埋められないはずだ。
「確かにHVは燃費も良くなる、加速性能も良くなる。でもノートを作る上ではVプラットホームを活用して軽量化すれば、燃費も良くできるし加速も良くできるでしょ、というところをエンジニアリングのパワートレイン設計部署と話し合って決めました。だったらHVはいらない、ノートには。その代わりクルマの基本的な質を高めるために集中して、ガソリンエンジンの物理限界にチャレンジしましょう、とやってきました」(水口氏)
「女性ならではの視点」はどうノートに反映されたか
女性が開発責任者を務めるのは、国内自動車メーカーでは水口氏が初めてだそうだ。軽自動車のハイトワゴンなどでは、女性目線の室内設計を売りにしたクルマが増えているが、ノートの場合はどうなのか。
「いわゆる“女子”としてではなく、私個人としてのこだわりになりますが」と前置きした上で、「男の人はある意味気分でクルマを買えますが、女性はものを買うことに対してシビアで、バランスをすごく見る。例えばバーゲンでもあらかじめ下見に行っておくぐらい買い物にシビアで、本当にものをきちんと見てくれる」(水口氏)。
いったんこれを買うと決めたら止まらない男性に対して、女性は売り場まで足を運んでも、実物を見て気に入らなければ買わずに帰ってくる。「そうした女子の視点で見て、どこから見てもバランスがとれているという点があるはず。そのポイントを目指したというのが、こだわりです」(水口氏)という。ロマンや憧れといった一時的な感情に流されない冷徹な視点が、女性ならではのポイントというわけだ。
そしてターゲットユーザーだが、もともと先代モデルから性別や年齢など万遍なく広がっていたため、あえて絞る必要はなかったという。企画時に考えたのは、30代で子どもが1人のビギニングファミリーを増やしたいということ。実はこの世代にはフィットが強い。ホンダの販売店では軽自動車を売っているから、軽の「ライフ」と広さを比較してフィットにする人が多く、それが販売につながっていた。
今は日産の販売店でも軽自動車を扱っているから、下地はできている。新型ノートでは、まずデザインを若々しく格好良くして30代のユーザー層を狙った。「人間なら、きちんとした好青年というイメージです」。後席ドアはチャイルドシート操作の邪魔にならないように、85度と大きく開くようにした。「ちょうどその年代に入った部下がいるので、何度も実際に確認してもらいました」(水口氏)。
ノートの特徴的な室内装備で、背高のティッシュボックスが丸ごと入るグローブボックスがある。いかにも女性的な視点だと思っていたのだが、実はこれ、花粉症に苦しむ男性エンジニアがやってみたいと提案してきたのだそうだ。「それほどの大きさは今まで実現できなかったので、ぜひやってみてくれとハッパをかけた。このように細かい部分まで配慮することで、隙のないクルマが作れました」(水口氏)。
燃費と走りを両立したエコスーパーチャージャー
エンジンは先代ノートが1.5Lおよび1.6Lの4気筒だったのに対して、新型では1.2Lの3気筒にダウンサイジングした。一回り小さいマーチと同じエンジンのため、発売前には販売店の営業マンたちから売れ行きに影響しないか、心配の声が出ていたという。しかしフタを開けてみると、「今のお客さんの一番の関心は排気量や馬力等のスペックではなく燃費。なので燃費を頑張って、でも乗ったときにストレスを感じない走りも両立できるように仕上げました」(水口氏)。
実際どんな感じなのか、スーパーチャージャー付きの試乗車を借りて、横浜の市街地を走ってみた。省燃費運転を支援するECOモードをオンにしていると、アクセルを奥まで踏まない限りスーパーチャージャーは作動しないが、市内での流れには十分ついていけて不足はない。ECOモードをオフにしてちょっと踏み込むと、スーパーチャージャーが軽い作動音を発して、小気味よく加速する。3気筒だからといって、気になる振動も感じない。
実はこのECOモードのチューニングには、開発スタッフたちが2011年3月の震災から学んだ経験が生かされている。神奈川県厚木市にある開発拠点はマイカー通勤の社員が多いが、震災の影響でガソリンが手に入りにくくなり、燃費の良いクルマにみんなが乗り合わせて通勤した。同じガソリンで少しでも長く走れるように、細心の注意を払ってアクセルをコントロールした。そうやって学んだエコ運転と同様に、ノートを買ったお客さんがコントロールできるように開発したのだという。
震災に遭った地域の人々にとって、ガソリン不足に備えるために燃費の良いクルマは絶対条件だ。そして現金支出をできるだけ抑えるため、車両価格が安い方が望ましいはず。環境との共存を目指すこれからの社会には、エコと低価格を両立する志向性が欠かせない。ノートのようにダウンサイジングを具現化した新世代のコンパクトカーが、自動車メーカー各社から続々と登場し、これから存在感を増していくのは間違いない。
(文・写真/柳 竹彦)